四季折々の暮らし方と食養生

折々の四季の暮らし方 健康を考える

春から始める自然とつながる暮らし方

 春は1日のうちでいうと朝にあたります。朝の時間の過ごし方でその日1日が決まるように、春の過ごし方がその年の健康を左右するといっても過言ではありません。体内時計を冬から春にリセットして、心と体をリフレッシュさせましょう。

春の養生

 暦の上では、「立春」から「穀雨」までが春にあたります。春は冬の冷たい空気が緩み、暖かな陽気が満ちてくることで、草花が芽吹き、のびやかにエネルギーを発揮する季節です。東洋医学では、春は新芽が青葉へとぐんぐん成長していくように、上昇のエネルギーが強くなると考えます。そのため、エネルギーを発散できるように、心も体ものびやかにすごすのが「春の養生」です。

四季折々の暮らし方
春の養生

 春になると、たっぷり寝たのに眠い、体がだるいなど、さまざまな不調が現れます。気温が低い冬は交感神経が活発に働きますが、春を迎えて少しずつ暖かくなると副交感神経が優位になってきます。そして、春は日照時間の短い冬時間と日照時間の長い夏時間の移行時期にあたるため、体内時計が「時差ボケ」のような状態になり、特に眠気を感じやすくなります。また、気候も環境も変化が多い春は、ストレスによって「肝」の不調が起こりやすくなります。

 東洋医学で言う「肝」の働きは、血液の貯蔵や解毒と言った西洋医学の「肝臓」の働きも含みますが、そのほかに目や筋肉・爪・感情のコントロールなど広い範囲にわたっています。

 朝のすっきりした目覚めと日中の活動的な行動、夜の深い眠りというようなメリハリのある生活が、体内時計を春時間に合わせてくれます。

春の食養生

 冬から早春の田んぼや野山には、春の使者といわれる「ふきのとう」や山菜の王様と呼ばれる「たらの芽」など、特有の苦みと香りのある山菜が芽吹きます。この特有の苦みやえぐみの元となるアクには、抗酸化作用のあるポリフェノール類が含まれているため、調理の際はアクを抜きすぎないようにしましょう。ただし、苦みには熱を鎮める作用があり、体を冷やしてしまうため、取りすぎには注意が必要です。
 春に亢進しやすい「肝」の働きを正常に戻すには、いちごやオレンジ、グレープフルーツ、ヨーグルトなど酸味がある食べ物がオススメです。三位には、イライラした気持ちを抑え、目の疲れを癒し、眠りを深くして、胃腸の働きを高める作用があります。ほかに、「肝」の働きを高めてくれる食材には、セロリ、トマト、ピーマン、ニンジン、ほうれん草、イカ、レバーなどがあります。反対に、ショウガやネギ、黒コショウなどの辛い物を食べると、「肝」の働きが亢進してイライラが強く出やすいため、控えめにしましょう。それぞれの効能を上手に取り入れて、冬の間に体に蓄積された脂肪や老廃物を排泄し、体を活動モードに切り替えましょう。

春に起こりやすい体の不調

  • うつ病
  • 花粉症
  • 紫外線

夏の暑さを乗り切る暮らし方

 夏は、1日うちでいうと昼にあたります。昼の過ごし方がその後の夕方、夜に大きく影響します。夏はエネルギーを上手に発散し、活動的にすごしましょう。

夏の養生

 暦の上では「立夏」から「大暑」までが夏にあたります。夏は草木が成長し、万物が茂り、陽気が最も充実している季節です。

 東洋医学では、夏は暑く、明るく、上へ上へと向かって燃え盛るイメージで、太陽のエネルギーが最大になると考えます。エネルギーが満ち溢れ、気持ちが外に向かうため、活動的に過ごすのが「夏の養生」です。

四季折々の暮らし方
夏の養生

 夏は汗をかきやすく、体力を消耗しやすくなります。暑さの厳しい夏は、冷房の効いた室内と炎天下を行き来することによる夏バテや、冷たいものの食べ過ぎによる消化管リズムの乱れ、寝苦しい夜が続くことによる睡眠リズムの乱れなど、体内時計も乱れがちになります。

 過剰な水分摂取はむくみ、水分不足は熱中症などの原因になり、水分の取り方にも注意が必要です。また、暑さが厳しい夏には、「しん」の不調が起こりやすくなります。東洋医学でいう「心」は、西洋医学の「心臓」と同じように全身に血液を循環させるポンプのような役目もありますが、精神や意識をコントロールする働きも担っています。そのため、「心」がスムーズに働いていれば体の隅々にまで栄養がいきわたり、意識もはっきりして、精神的にも安定します。

 夏は上手に水分を補いつつ、できるだけ汗をかいて、体にこもった熱を発散させるのが、健康に過ごすポイントになります。

夏の食養生

 夏が旬の野菜や果物には、体の熱を冷ます働きがあります。そして、水分を多く含んでいるので、汗として排泄された水分を補充してくれる働きもあります。また、ゴーヤ、セロリ、クレソン、緑茶など苦みのある食べ物は、体の余分な熱を冷ましたり、痛みを鎮めたりする作用があり、「心」の働きを補ってくれます。そのほかに、強心、消炎、止血作用もあります。

 一方で、冷たい物や夏野菜は、取りすぎると胃腸を冷やしてしまうので、その働きが弱くなり、消化不良やむくみの原因となります。常温よりも冷たい物を控えたり、体を冷やす食べ物を温める食べ物に変えたりする工夫が必要です。冷奴や生野菜サラダなど冷たい物を食べた後は、温かい飲み物をしっかり飲んだり、体を冷やす食べ物には熱や圧力、香辛料を加えたりしてみましょう。むくみを解消する食材には、はと麦、緑豆、小豆、とうもろこし、冬瓜などがあります。

夏に起こりやすい体の不調

  • 熱中症
  • 冷え症

秋に合わせて自然を楽しむくらし方

 秋は1日のうちでいうと夕方にあたります。まもなくやって来る冬を迎えるためにも、ゆっくりと体力を養う「収穫の時期」にしましょう。

秋の養生

 暦の上では「立秋」から「霜降」までが秋にあたります。秋は実ったものを収穫するように、エネルギーを身体の内側にしまう季節です。東洋医学では、秋はすべてのものの形が定まる季節と考えます。そのため、これから迎える冬に備え、夏の疲れを回復しつつ、充実した体づくりをするのが「秋の養生」です。
 春から夏に副交感神経優位になっていた自立神経も、秋から冬にかけては交感神経優位へとシフトしていきます。この変化がスムーズに行われないと、ホルモンのリズムが乱れたり、免疫機能が低下したりして、さまざまな症状が現れてきます。この時期は気圧や寒暖の差が激しいこともあり、体が気候の変化に適応できず、体調が不安定になりがちです。

四季折々の暮らし方
秋の養生

 秋には「肺」の不調も起こりやすくなります。西洋医学では肺は呼吸を司る器官ですが、東洋医学でいう「肺」は、栄養分を全身に運ぶ役割を担っています。それ以外にも、汚れた空気を体外に排出し、きれいな空気を吸入することで呼吸器系を清潔にし、免疫機能を高めたりする働きをしています。

 秋にはさまざまな食べ物が豊富に出回り、涼しくなると食欲も次第に回復してきます。そして、涼しく温度も低いため睡眠リズムを取り戻すのにもピッタリな季節です。秋の味覚を満喫しながら、適度に体を動かし、睡眠で体を修復して、ゆっくり体内時計を整えましょう。

秋の食養生

 秋は朝晩の冷え込みや乾燥が強くなるため、気管に負担がかかって鼻や喉に症状が現れやすくなります。さらに、秋は乾燥した空気が鼻や喉の粘膜を刺激して症状が悪化しやすくなるため、乾燥を予防する食べ物を取り入れるのがオススメです。梨やぶどうなどの果物は、不足しがちなビタミン類が豊富に含まれているだけでなく、潤いを補ってくれる食べ物です。

 「肺」の働きを補うには、唐辛子やネギ、ショウガ、コショウなどの辛みを取るのが効果的です。「肺」の働きを高めてくれる食材には、白きくらげ、山芋、ユリ根、白ごまなどがあります。秋のうちにしっかりと必要な栄養を取って、冬の寒さに備えましょう。

秋に起こりやすい体の不調

  • 皮膚トラブル
  • 気管支ぜんそく
  • 肥満

冬の寒さを乗り切る暮らし方

 冬は、1日のうちでいうと夜にあたります。エネルギーを消耗することは避け、ゆっくり過ごすのが「冬の養生」です。

冬の養生

 暦の上では「立冬」から「大寒」までが冬にあたります。冬は寒さを乗り越えるために無駄なエネルギーを抑えて静かに過ごす季節です。東洋医学では、冬はすべてが閉塞して、エネルギーが内側に集まると考えます。冬を迎えて日照時間が短くなり、気温や水温が下がってくると、野生の動物たちは自然と活動が鈍くなります。人間も野生の動物と同じように、冬になると体の動きが鈍くなったり、目覚めの悪さに悩まされたりする人も多いのではないでしょうか。冬は体が寒さに備えてエネルギーを蓄えるモードに入るため、肥満にも注意が必要です。

四季折々の暮らし方
冬の養生

 また、こういった冬の厳しい環境に体内時計を合わせるために、自立神経は交感神経の働きが優位になります。この自然の流れに逆らって、冬に不摂生や過労を積み重ねると、体力や抵抗力が弱まってしまいます。そして、冬の寒さから身を守るために、体がより多くのエネルギーを消耗するため、免疫力を低下しやすくなります。さらに寒さが厳しい冬は、「腎」の不調が起こりやすくなります。東洋医学でいう「腎」は生命活動を維持するエネルギーを蓄えたり、体内の水分代謝をコントロールしたりする働きを担っています。ホルモンバランスや加齢などとも深く関係しているため、腎のバランスがくずれると老化が早まったり、不妊や尿量のコントロールができなくなったりします。

 冬には十分な休息によってエネルギーを蓄えましょう。そして、体を温めることを第一に、寒さに負けない体力を養うことが大切です。

冬の食養生

 新鮮な食材が手に入りにくくなる冬は、保存食として塩漬けの知恵があります。鹹味(塩辛い味)は「腎」の働きを補うため、食塩や味噌、しょうゆなどは適度に取るようにしましょう。塩辛い味の源である海水にかかわりのあるわかめやひじき、のりなど色の濃い海産物や黒っぽい食べ物も「腎」を補うとされています。そのほか、腎の働きを高める食材には、えび、ニラ、牡蠣、黒ごま、山芋、ふかひれなどがあります。

 また、寒い冬は副交感神経の働きが低下し、小腸や大腸の筋肉が収縮を繰り返す蠕動運動が低調になったり、気が付かないうちに体内の水分が失われたりして、便秘になりやすくなります。便秘解消には、食物繊維を含む大根やごぼう、れんこんなどの冬野菜がオススメです。冬野菜は冬に成長するという意味ではなく、秋までに成長を終えて冬まで根付いている植物を指します。自然の貯蔵庫である冬の畑に息づく野菜は、鮮度が保たれやすく、寒さから身を守るために野菜の糖度も上昇して、ほかの季節より甘みが増すのが特徴です。体を温める働きもあるため、冬野菜をしっかり食べて代謝のよい体を作りましょう。

冬に起こりやすい不調

  • 風邪
  • 冷え
  • 心筋梗塞、脳梗塞
  • 冬季うつ病

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