ワキガについて

脇と海 バクテリアバスター

ワキガとは

 ワキガの正式な呼び方は「腋臭症(えきしゅうしょう) (英語: hircismus )」であり、皮膚のアポクリン腺から分泌される汗が原因で脇の臭いが強い症状がみられる状態を意味します。

ワキガの場合、自分では気がつかないケースもあれば、自分も周囲も臭いが気になっているケースもあります。あるいは、自分ではワキガだと思っていても、実際には思い込みだったという場合もあるし、医療機関で治療が行われることもあります。

わきが自体は珍しいことではありません。黒人では100%、欧米人では70~90%、中国人では3~5%、日本人では10%~15%の割合でわきが体質の方がいます。東南アジア以外では珍しい体臭ではないので、生活する上でわきがが問題視されることはあまりありません。

ワキガにも程度があり、軽度であれば脇に鼻を近づけて臭いを嗅いだときに臭う程度ですが、中度になると、脇と鼻を近づけない状態でも薄らと臭いを感じます。そして、重度のワキガでは、その人が部屋に入ってくると気がつくほどの臭いになります。

症状

 腋窩部(わきの下)からの腋臭(腋窩臭)が運動時などにかくエクリン腺からの汗の臭い(酸っぱい臭い、汗臭いと表現されることが多い)とは異なる特有の臭いがする。
その臭い自体は人やその時の環境などによって違いがあるため一概には表現できないが、ゴボウの臭い、ネギの臭い、鉛筆の臭い、酢の臭い、クミンの臭い、納豆の臭い、古びた洗濯ばさみの臭い、ドリアンの臭いに喩えられることが多い。
この臭いはその形質を有する個人の属する集団によっては、しばしば他人に不快感を及ぼすものとして扱われ、そのワキガ臭の原因となるアポクリン腺分泌物は衣服に黄色いしみを作り、汗が大量に出る多汗傾向を伴う。
 ニオイを嫌う人の多い集団の中において、腋臭症患者の多くがそれを過度に気にする精神状態に追い込まれ、結果としてうつ病などを併発する恐れがあり、腋臭症が少数である東アジアなど、人間集団の傾向によっては腋臭症は軽視することはできない重要な健康問題となる。

原因

 汗腺はエクリン汗腺とアポクリン汗腺に分けることができ、それぞれ分泌される汗の成分に違いがあります。

エクリン腺とアポクリン腺
エクリン腺とアポクリン腺

エクリン腺は全身のほとんどに分布しており、主に体温調節のために汗を出す汗腺で、エクリン汗腺から分泌される汗は98%が水分とされており、無味無臭で特にニオイは発しません。

一方、アポクリン腺はカラダの限られた部分にあり、特にワキの下に多く分布しています。 独立して皮膚に開口しているエクリン腺と異なり、毛根に開口部があります。アポクリン汗腺は陰部や外耳道にもあり、耳垢が湿っている人はワキガの可能性が高いと判断することができます。

 腋臭症の発生の原因は腋窩部のアポクリン腺から分泌される汗が原因ですが、アポクリン腺の分泌物自体は無臭です。しかし、その汗が皮膚上に分泌されると皮脂腺から分泌された脂肪分やエクリン腺から分泌された汗と混ざり、それが皮膚や脇毛の常在細菌により分解され、腋臭症を発する物質「3メチル2へキセノイン酸」が生成されるのです。また、空気に触れることで毛穴の常在細菌と混ざり合い、成分が酸化することも症状の悪化を促進させます。

ワキガ臭発生のメカニズム

ワキガ臭が出る仕組み

アポクリン腺から出る汗に含まれる脂質やたんぱく質が皮膚の常在菌に分解されると、腐敗して臭いを放ちます。そこに皮脂腺から分泌される皮脂が加わると、悪臭を強める要因となります。ワキガでは、アポクリン腺から分泌される汗そのものが直接臭うわけではありません。汗に含まれる成分や皮脂が常在菌と反応したとき、ワキガ臭が発生する仕組みになっているのです。

汗、皮脂、常在菌の量が多ければ、それだけ臭いは発生しやすくなってしまいます。ワキガの程度にもよりますが、これらの物質が混ざり合わないようにするだけでも、ある程度臭いは抑えることができるといえます。

ワキガになる原因は、汗、皮脂、細菌の関与が挙げられます。分泌された直後では、汗はほとんど無臭に近いですが、皮脂や細菌と混ざり合うことで臭いが生じます。ここでは、どのような仕組みでワキガ臭が発生するのかお伝えしていきます。

汗(アポクリン汗腺)

汗を分泌するための器官として汗腺があり、「エクリン腺」と「アポクリン腺」に分類されます。
エクリン腺とは、全身に分布している汗腺であり、分泌される汗はほとんど無色無臭となります。エクリン腺から出る汗によって、体温調節が行われています。

アポクリン腺はわきの下、性器の周辺、耳の中、乳首のまわりなど特定の場所に集っています。ここから出る汗は粘り気があり、脂肪・鉄分・色素・アンモニアなどからできています。乳白色で臭いもあり、汗じみ・黄バミの原因です。
ワキガの原因は、アポクリン腺から出る汗とされています。

皮脂(皮脂腺)

 皮脂腺とは、皮膚の内部にある腺であり、ここから皮脂を分泌しています。皮脂腺は、手のひらや足裏を除き、ほとんど全身に分布しています。皮脂腺は毛根を包み込む毛包に付着しており、毛穴に通じています。
 皮脂腺から皮脂が分泌された後、体温によって液化されて広がり、皮膚や毛髪を保護するなどの役割を担います。皮脂といえば、皮膚のべたつきやニキビの原因というイメージが強いですが、皮膚にとっては不可欠なもので、分泌が少ないと肌がカサカサになってしまいます。しかし、皮脂が細菌に分解される過程で悪臭を放つため、皮脂の分泌が多すぎる場合は、ワキガの原因につながります。

細菌(脇などにいる常在菌)

 ヒトの皮膚には、常在菌と呼ばれる細菌が潜んでいます。常在菌には、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、アクネ桿菌などがあり、いずれも皮膚に存在するだけでは害のあるものではありません。常在菌は、害のある細菌の増殖を防いだり、皮膚のバリア機能を高めたりする役割を持っています。
 しかし、常在菌が多く繁殖すると、ワキガの原因になることがあります。脇のように蒸れる部位では常在菌が特に増殖しやすくなるため、臭いが発生しやすい環境になります。

時期

腋窩、性器、乳輪部分のアポクリン腺が成長し活動するのは第二次性徴が認められる頃のため、一般的に腋臭臭が発生するのは思春期以降です。

ちなみに突然ワキガを発症した場合は、ホルモンの変化や生活習慣の変化が原因の可能性が高いです。自然治癒は期待できませんが、加齢とともにニオイが落ち着くことが大半です。

ワキガの要因であるアポクリン腺は脇だけでなく、外耳道(耳の穴)、乳輪、陰部にも存在します。
腋臭症の女性の一部では、性器や乳輪からもわきが臭が認められる場合があり、特に陰部のワキガは「すそワキガ」と呼ばれ多くの方が悩まれる症状です。

アポクリン汗腺が活発化するメカニズム

一般的には大きく3つの原因があると考えられています。

①遺伝によりアポクリン汗腺数を多く受け継ぐ
②性ホルモンの影響によりアポクリン汗腺の分泌が増加する
③生活習慣の乱れもワキガ発症のトリガーになりうる

原因①:遺伝によりアポクリン汗腺数を多く受け継ぐ

ワキガ体質は優性遺伝で、両親の一方がワキガの場合は約50%の確率で子どもに遺伝します。両親がワキガの場合は約80%で遺伝すると言われるほど、遺伝による影響が大きいです。遺伝によって変わるのはアポクリン汗腺の数で、多いほど独特のニオイを発しやすくなります。また、アポクリン汗腺の大きさも、ワキガの人の方が大きいことが特徴です。必ず遺伝するわけではありませんが、両親のどちらかがワキガの場合は子どももワキガの可能性が高くなります。

原因②:性ホルモンの影響によりアポクリン汗腺の分泌が増加する

 アポクリン汗腺は、その大きさや数によってニオイが変化します。先述したように、アポクリン汗腺の数や大きさは慢性遺伝で決まりますが、生まれながらにしてワキガを発症するということはありません。ワキガになりやすい時期は中学生~高校生にかけての思春期ごろが多く、性ホルモンバランスの変化によってアポクリン汗腺が大きくなったり、活発化したりします。

人によってワキガを発症する時期は異なりますが、性ホルモンバランスの変化により強いニオイを発するようになるケースが多いでしょう。

原因③:生活習慣の乱れもワキガ発症のトリガーになりうる

 生活習慣の乱れによってストレスがかかりやすくなると、アポクリン汗腺が刺激され、汗が分泌されやすくなります。発表会の前に手汗をかくといった現象は、ストレスによるものの代表。経験したことのある人も多いはずです。また、生活習慣の乱れに繋がりやすい運動不足もワキガに影響を与えます。運動をしないと、汗をかきにくくなり老廃物が体に溜まった状態になります。すると、汗をかいた際に溜まった老廃物が一気に外に出てくるため、強いニオイとなるのです。
 また、タバコに含まれるニコチン成分は汗腺を刺激する成分となっているため、わきが臭いの原因である「アポクリン線」や 汗臭さの原因である「エクリン汗腺」を刺激します。お酒は、皮膚の血管を拡張したり、体温調節中枢に働いたりと、直接汗腺の活動が高まる為、発汗量が増す事でわきが臭が強くなります。

ワキガの解決法

わきがは、アポクリン腺という汗腺の一種から分泌された汗が原因の症状です。
この汗が毛根に生息している常在細菌に分解された事により、強い臭いを発生する物質が作りだされます。わきの下をいつでも清潔に保つ事で雑菌の増殖を抑える事が出来ます。
清潔にするためには、お風呂に入ってよく洗うことが基本中の基本ということになりますが、その他に脇毛の脱毛(汗や皮脂が付着する場所が失われる為、 その分雑菌によって分解処理される量が減ります)・衣類を清潔にする・デオドランドクリームなどの使用(脇の汗を抑え常在菌を殺菌するなどの効果が期待できます)も、 わきの下を清潔に保つには必要な事です。

1毎日入浴をする
2汗をかいた後はすぐにシャワーなどを浴びる
3汗をかいた後はすぐに清拭して乾燥させる
4制汗剤(アルミニウム化合物、酸化亜鉛等配合剤)を使用する
5殺菌剤(イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム等配合剤)を使用する
6消臭剤(酸化亜鉛、茶エキス等配合剤)を使用する
7腋が乾燥しやすい衣服を選ぶ
8下着や汗パッドをこまめに取り替える
9腋の毛を剃る

症状が軽度の場合

●みょうばん水
みょうばん水は酸性の性質があり、アルカリ性である匂い成分に対する消臭作用があります。また、みょうばん水はスーパーに売っている「焼きみょうばん」を水でうすめた制汗剤です。お子さまのアトピーの治療にも使用されるほど、お肌にやさしいので安心してお使いいただけます。
費用:数100円程度

●制汗剤
汗を抑えたい部位に、塩化アルミニウムを含む制汗剤を塗布します。汗腺に角栓を作ってフタをすることで、汗の分泌を抑制します。
費用:5,000円程度

ボトックス注射

治療内容

ボトックス注射とは、ボツリヌストキシンを気になる部分に注射することによって汗を分泌する汗腺の働きを抑える治療です。発汗を促す作用を持つアセチルコリンの働きを抑え、汗が過剰に放出されるのを防ぎます。
持続期間3〜6ヵ月
傷跡の有無ほとんどなし(注入時の針穴のみ)
施術可能部位脇、手のひら、足の裏、額、うなじ
日常生活への影響注射なので傷跡の心配がなくダウンタイム(術後の制限)もないので、とてもお手軽です。
費用1回あたり50,000円~100,000円程度
メリットボトックス注入による傷跡はほとんどなく、注入時に針穴が開くのみです。日常生活への影響もなく、手軽に治療できることが利点です。
デメリット短期的な効果しか得られないため、継続して治療を受ける必要があります。

吸引法

治療内容

脇(ワキ)の皮膚の一部を数ミリ切開し、その切開から治療用のカニューレを挿入しアポクリン汗腺とエクリン汗腺を吸引していきます。
持続期間3〜6ヵ月
傷跡の有無あるが、小さい
施術可能部位
日常生活への影響傷も小さく、術後の回復も早い
費用100,000円程度
メリット傷も小さく、術後の回復も早い為、患者様への負担の少ない方法です。
デメリットしかし、吸引法では繊維組織にしっかりと根付いた汗腺類を完全除去するのは難しく、手術をしたのに臭いが残る・再発したなどの欠点があります。

症状が中度の場合

マイクロ波/ミラドライ

治療内容

マイクロ波(電磁波)を脇に照射することによって、汗腺を壊す仕組みを利用したワキガと多汗症の治療方法です。マイクロ波には、水分に反応して熱を発する特性があり、水分の多い汗腺を壊すように作用します。マイクロ波が水分の多い汗腺に集中して作用するため、周辺の組織にはほぼダメージが加わりません。汗の量を抑えたい場合はエクリン腺のある浅い層に、汗の臭いも抑えたい場合はアポクリン腺のある深い層に、マイクロ波を照射します。
持続期間長期
傷跡の有無なし
施術可能部位
日常生活への影響施術時には局所麻酔とクーリングを行うため、痛みや熱感はほとんどありません。治療によって痛みが生じた場合も、日常生活に支障がない程度となります。また、腫れやしびれなどが生じることがありますが、術後のケアで最小限に抑えていきます。
費用250,000~350,000円程度
メリット皮膚を切開しないため、傷跡が残る心配がなく、一度破壊された汗腺は再生することもありません。ワキガや多汗症が再発しにくく、半永久的に効果が持続します。
デメリット体質によっては2回の施術が必要になる場合もあります。

症状が重度の場合

切開法(皮べん法、剪除法) ※保険適用

治療内容

反転剪除法は、ワキガ治療の中では高い効果が期待できる方法です。ワキガの症状が重度の方や、他の治療法では改善が見込めない方などが適応となります。反転剪除法では、脇の下を5cmほど切開して反転させます。そして、皮下組織内にあるアポクリン腺を医師が直接見て確認し、除去していきます。医師が目視で感染を取り除くことができる方法は反転剪除法だけであり、長期的に見ても効果が高いとされています。
持続期間長期
傷跡の有無あり(5cm)
施術可能部位脇のみ
日常生活への影響2〜3日の安静が必要になります(痛み止め処方)。術後3日間は脇を圧迫固定し、7日目に抜糸となります。
費用片脇:200,000~250,000円程度(両脇の場合は左記の2倍)
メリット医師が目視で汗腺を取り除いていくため、確実性が高い治療法となります。他の治療法では改善が見込めない、重度のワキガでも適応となります。
デメリット5cmほどの大きな傷跡が残ります。黒ずみ(色素沈着)を起こすことがあります。

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