熱放射に関する4つの法則

遠赤外線の基本則 キュアヘルツ

遠赤外線を科学的に説明するにあたり、物理的な4つの法則があるので下記に説明します。

キルヒホッフ(Kirchhoff)の法則(1860年)


キルヒホッフの法則

 グスタフ・ローベルト・キルヒホフ, 1824年3月12日 – 1887年10月17日

プロイセン(現在のロシアのカリーニングラード州)の物理学者放射平衡状態にある物質が放出する放射エネルギーと吸収能との比は、物質に関係なく一定で、その値は完全黒体の放射エネルギーに等しい。
つまり、一般的な不透明な材料の場合は、吸収率と放射率は等しい という法則で、1860年にキルヒホッフ が発見しました。キルヒホッフは、電気回路に関する法則と放射エネルギーに関する法則と反応熱に関する法則を発見しているので、通常はキルヒホッフの法則 (放射エネルギー)と記述されることが多いようです。

 熱放射が物体の表面に到達すると、その一部は物体に吸収されます。そして、残りは物体を通り抜けて反対側に到達するものと表面で跳ね返るものとに分けられます。熱放射が物体を通り抜けることを 透過といい、物体に到達した熱放射エネルギーに対する透過エネルギーの割合を 透過率といいます。一般に、金属は不透明で熱放射を透過しませんが、ガラスなどの透明な物質は可視光線などの一部の波長に対して透明で熱放射を透過します。

物体表面で熱放射が跳ね返って再び空中に戻ってくることを 反射といい、物体に到達した熱放射エネルギーに対する反射エネルギーの割合を 反射率 といいます。

実在する物体では熱放射によって放出されるエネルギーの割合は 放射率によって表されます。もし、物体が平衡状態で温度が一定であったとすると、熱放射によって周囲に放出されるエネルギーと熱放射によって周囲から吸収しているエネルギーがつり合って等しくなり、物体の放射率 ε と吸収率 α が等しいと見なせます。この関係を キルヒホッフの法則といいます。

放射率 ϵ = 吸収率 α

また、エネルギーの保存則を考えると、透過・反射・吸収エネルギーの合計が物体に到達した全エネルギーと等しくならなければいけないため、透過率 τ、反射率 ρ、吸収率 α の間には、以下の関係が成り立ちます。

透過率 ϵ + 反射率 ρ +吸収率 α = 1

シュテファンボルツマン(Stefan-Boltzmann)の法則:1884年

シュテファンシュテファンボルツマン

 ヨジェフ・シュテファン, 1835年 3月24日 – 1893年 1月7日オーストリアの物理学者
 ルートヴィッヒ・エードゥアルト・ボルツマン, 1844年2月20日 – 1906年9月5日オーストリアの物理学者

 熱輻射により黒体から放出される電磁波のエネルギーと温度の関係を表した物理法則である。
ヨーゼフ・シュテファンが1879年に実験的に明らかにし、弟子のルートヴィッヒ・ボルツマンが1884年に理論的な証明を与えた。二人の名前をとり、シュテファンボルツマンの法則と呼ばれています。

 ある温度にある黒体から放射される全放射エネルギー量を表す。 全放射エネルギー量は、黒体の絶対温度の4乗に比例する。従って温度が高くなると急速にその放射エネルギー量が増加する。

E=5.67×10^-8 ×T(絶対温度)[W/m2]

吸収体(ワーク)と放射体(ヒーター)の温度差が300℃のときと100℃のときの放射エネルギー量を比較すると、

(300+273)^4 ÷(100+273)^4 ≒5.57

従ってエネルギー総量は5倍以上となり、放射エネルギー量は温度に対する依存性が非常に大きいことがわかる。

ウィーン(Wien)の変位則:1896年

ウィーン(wien)の法則

 ヴィルヘルム・カール・ヴェルナー・オットー・フリッツ・フランツ・ヴィーン、
 1864年1月13日 – 1928年8月30日ドイツの物理学者

ウィーンの変位則は1896年にウィーンが発見しました。物質から放射される電磁波のピーク波長(一番エネルギーの高いところ)は、放射体の温度が高くなるにつれて、短波長側にシフトします。これをウィーンの変位則といいます。

ピーク波長 = 2897 ÷ T【μm】

例えば、36℃(絶対温度T=36+273=309K)の体温を持った人間が放射する電磁波のピーク波長(λ)は、2897÷309=9.4μmとなります。即ち、人間は、約9.4μmをピークとした遠赤外線を放射しているわけです。ウィーンの変位則で示されるピーク波長を境に短波長側の積算面積(エネルギー)は、全体エネルギーの25%で、長波長側は75%です。即ち、長波長側(遠赤外域側)が、3倍のエネルギーを放射していることになります。

ウィーンの変位則
ウィーンの変位則

プランクの法則:1900年

プランクの法則_マックスプランク

マックス・カール・エルンスト・ルートヴィヒ・プランク, 1858年4月23日 – 1947年10月4日

 ドイツの物理学者物理学における黒体から輻射(放射)される電磁波の分光放射輝度、もしくはエネルギー密度の波長分布に関する公式。ある温度 T における黒体からの電磁輻射の分光放射輝度を全波長領域において正しく説明することができます。

 プランクの法則とは、黒体の放射エネルギーと波長の関係を示したものです。物質はその温度に応じたエネルギーを電磁波の形で放射しています。放射されるエネルギーは、温度により、物質により、またその表面状態などにより変化します。一般の物質では放射率が1以下になります。したがって、黒体と同一温度の物質の分光放射エネルギー特性は、黒体の示すそれより下側に、曲線が描かれることになります。

Planck(プランク)の法則
プランクの法則
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