遠赤外線とは何か
赤外線がいかにカラダを温めるかを述べる前に、「遠赤外線とは何か?」について説明したいと思います。まず、遠赤外線とは、赤外線の一部です。赤外線には、「近赤外線」「中赤外線」「遠赤外線」があり、それぞれ下記の特徴があります。
<近赤外線>
近赤外線は波長がおよそ0.7 – 2.5 µmの電磁波で、赤色の可視光線に近い波長を持つ。性質も可視光線に近い特性を持つため「見えない光」として、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコン、生体認証の一種である静脈認証などに応用されている。光ファイバーでもこの波長帯が使われ、代表的な波長は1.55µmである。
<中赤外線>
中赤外線は、波長がおよそ2.5 – 4 µmの電磁波で、近赤外線の一部として分類されることもある。赤外分光の分野では、単に「赤外」と言うとこの領域を指すことが多い。波数が1300 – 650 cm−1 の領域は指紋領域と呼ばれ、物質固有の吸収スペクトルが現れるため、化学物質の同定に用いられる。
<遠赤外線>
遠赤外線は熱線とも呼ばれ、波長がおよそ4 – 1000 µmの電磁波である。性質は電波に近い。
あらゆる物体はそれ自身の温度によった遠赤外線を出しているため、遠赤外線センサは、光源が無い場所でも目標を視認することが可能となる。また黒体放射においては、温度に応じて異なる周波数の赤外線が放射されることから、対象物の温度を検知できる。これを利用した技術がサーモグラフィーである。
■熱移動の三原則
① 伝導伝熱(thermal conduction)
金属棒の先端を加熱すると次第に熱が伝わり他端まで熱くなります。このように熱が物質を伝わっていくことを伝導伝熱といいます。
物質により熱伝導率は異なります。金属類は熱の良導体です。気体は、一般に、低熱伝導体です。したがって、多孔質の物質は、緻密質の物質より熱伝導が低くなります。
熱が物質によって運ばれる現象のことを言います。
固体または静止している流体の内部において高温側から低温側へ熱が伝わる伝熱現象です。
原子、分子の格子振動の伝播や自由電子の移動によって、熱が運ばれていきます。
熱伝導率は物質の状態によっても異なり、気体<液体<固体の順に大きくなります。
熱伝導が良い物質の代表として金属がよく知られていますが、その中でも熱伝導率が高い代表的な金属は、[銀 > 銅 > 金 > アルミ]の順番で、効率よく熱を運ぶ事ができます。
② 対流伝熱( thermal convection)
水や空気など(液体や気体)は、下から加熱されると温まった部分が膨張して密度が低くなり上昇し、冷たい上の部分が下降します。この作用が繰り返し行われ、全体が温度上昇します。
このように液体や気体が移動することで、熱を伝える方法を対流といいます。
流体において温度や表面張力などが原因により不均質性が生ずるため、その内部で重力によって引き起こされる流動が生ずる現象である。
要するに、熱の温度差によって生じた流体の移動によって、熱が運ばれる現象のことを言います。
熱伝導と対流の大きな違いは、熱伝導は物質の移動を伴わないのに対して、対流は物質(流体)の移動を伴うという点になります。
③ 放射伝熱(thermal radiation)
物質はその温度に応じたエネルギーを電磁波の形で放射しています。放射されるエネルギーは、温度により、物質により、またその表面状態などにより変化します。下図は、黒体の放射エネルギーと波長の関係を示したもので、プランクの法則と呼ばれます。
一般の物質では放射率が1以下になります。したがって、黒体と同一温度の物質の分光放射エネルギー特性は、黒体の示す曲線より下側に、曲線が描かれることになります。
熱放射(放射)とは、熱が放射線(電磁波)によって運ばれる現象のことです。熱輻射(ふく射)ともいいます。
電気ストーブでは、ヒーターを高温にすることにより、大半のエネルギーを赤外線(遠赤外線)として放射させ温めています。
物質を介した熱の移動ではなく、放射線によって熱が運ばれるため、物質のない真空中であっても熱は伝わります。
遠赤外線とは、上記の三原則の内、「放射」で伝わるものです。
非接触かつ、真空中でも伝わるのが「放射伝熱」の特徴です。
遠赤外線に興味がおありの方はこちらも是非ともご覧ください ①遠赤外線について ②遠赤外線の発熱の原理について ③熱放射に関する4つの法則 ④遠赤外線の可能性について
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