優れたエイジング効果が期待できる化粧品として、近年、幹細胞コスメが注目を集めています。
数年前までは幹細胞化粧品も販売価格が高く、気軽に試せる商品はあまり見かけませんでしたが、大手メーカーの参入など、市場の活性化と共に比較的安価な商品も数多く出回るようになりました。
しかし、ヒト幹細胞化粧品は、技術の発展により生まれたものであり、その原材料も本来であれば非常に高価なものなのです。
幹細胞とは
幹細胞(かんさいぼう、stem cell)は、分裂して自分と同じ細胞を作る(Self-renewal)能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞と定義されており、発生における細胞系譜の幹 (stem) になることから名付けられました。幹細胞から生じた二つの娘細胞のうち、少なくとも一方が同じ幹細胞でありつづけることによって分化細胞を供給することができる。この点で分化した細胞と異なっており、発生の過程や組織・器官の維持において細胞を供給する役割を担っています。
幹細胞の特別な機能
- 自己複製能
自身を無限に増やすことのできる機能 - 多分化能
体の色々な部位に変身できる機能
私たちの身体はひとつの受精卵から成長して、いまの皆さんの身体を形成しています。
これは幹細胞による働きであり、大人になってからも身体を維持できているのもまた幹細胞のおかげです。
幹細胞の例
受精卵(全能性)からつくられる胚性幹細胞(ES細胞)は、胎盤などの胚体外組織を除くすべての種類の細胞に分化する事ができる多能性を有します。
また生体内の各組織にも成体幹細胞(組織幹細胞、体性幹細胞)と呼ばれる種々の幹細胞があり、通常は分化することができる細胞の種類が限定されています。
例えば骨髄中の造血幹細胞は血球のもととなり、神経幹細胞は神経細胞およびグリア細胞へと分化します。このほかにも肝臓をつくる肝幹細胞や、皮膚組織になる皮膚幹細胞、生殖細胞をつくり出す生殖幹細胞などさまざまな種類があり医療分野への応用を目指して再生医学で盛んに研究が行われています。
再生医学への応用としては、従来から行われている造血幹細胞移植や、近年その実用化に注目が集まっている脂肪幹細胞移植などがあります。
新型コロナウイルスとも密接な関係を持つ幹細胞
サイトカインとは、幹細胞や免疫細胞、組織細胞など(以下、幹細胞など)から分泌される成長因子や調節因子のことです。
体が刺激を受けると幹細胞などに信号を送って、幹細胞などを増殖させたり、免疫細胞や組織細胞に分化させたりして体を守るために働きます。
新型コロナウイルスに感染した場合、肺で過剰な炎症が起こり、多臓器不全という命に係わる病に発展することがあります。
感染した部位に炎症が起きるとサイトカインが産生され、幹細胞などに炎症が起きていることを感知させることで、炎症やそれに引き続きて起こる組織破壊からカラダを守るように命令を出すことで、カラダを守るのです。
しかし、炎症が進行してしまうと、サイトカインも大量に分泌されるようになり、幹細胞がサイトカインの分泌をコントロールできなくなってしまいます。この状態を「サイトカインストーム」と呼びます。こうした状態では、ウイルスだけではなく自身の細胞にもダメージを与えてしまい、さらに過剰な炎症を起こしてしまうのです。
幹細胞化粧品について
幹細胞に着目して生まれたのが「幹細胞コスメ」です。
例えば、女性が美容目的で幹細胞治療を受けるとしましょう。まずは、その女性から採取した幹細胞を培養して、その細胞を移植します。
具体的には、培地※1と呼ばれる液体に幹細胞を入れて培養します。この培地が、「ヒト幹細胞培養液」です。
※1 微生物や細胞の培養のために用いる養分などを含む液状や固形の物質のこと
培養時には、幹細胞の増殖を促すために「ヒト幹細胞培養液」に温度の変化や振動などの刺激を与えます。そうすることで幹細胞はその刺激から守るために大量の生理活性物質を放出します。
この生理活性物質は別名「サイトカイン」とも呼ばれるたんぱく質の一種で、化粧品にも配合されている美容成分です。
この生理活性物質が溜まって培地の上澄み液となったものを「上清液」と呼び、この中には生理活性物質が500種類以上も含まれていると言われているのです。
幹細胞化粧品の注意ポイント!!
- 幹細胞コスメに幹細胞は入っていません。
- 「ヒト幹細胞培養液」は培養に使用された液体ではなく、ただの栄養水。
- 「ヒト幹細胞培養上清液」には生理活性物質が凝縮されている。
ヒト幹細胞培養液
- 幹細胞を培養するための液体
- 幹細胞は入っていない
- 培養に必要な養分を培養
ヒト幹細胞培養上清液
- 幹細胞が培養された際に分泌された液体
- 幹細胞は入っていない
- 500種類以上の生理活性物質(サイトカイン)を含有
現在、化粧品市場において、数多く発売されているヒト幹細胞由来成分配合の化粧品のうち、その大半が「ヒト幹細胞培養液」を用いた商品です。これは「ヒト幹細胞培養上清液」と比べて比較的安価というところに起因しています。
これらは、例えるなら、培養する「幹細胞」は出汁を取るための昆布やカツオで、「ヒト幹細胞培養液」は出汁を取るための液体。つまり水です。一方、「ヒト幹細胞培養上清液」は昆布やカツオから美味しい出汁の出た液体、つまりスープです。
「ヒト幹細胞培養〇〇〇」なんて、難しい言葉を並べられるとわからなくなってしまうかもしれませんが、こうして説明されると前者と後者では大きな違いがあることを理解してもらえると思います。
そして、さらに混乱を招いてしまうのは、まだ培養すらされていないただの液体である「ヒト幹細胞培養液」が、幹細胞化粧品のメイン成分として堂々と配合され、大々的に広告などで歌われてしまっているということです。幹細胞の培養にすら使われていないのに、「幹細胞配合」や「幹細胞から放出された美容成分含有」などと書かれてしまっては、もはや真っ赤なウソと言っても過言ではありません。このあたりについては、販売店や販売員、製造メーカーでも間違った認識をしている方が多いので、ご注意下さい。
ヒト幹細胞培養上清液の「含有成分」と「効果」
では、幹細胞からたくさんの生理活性物質「サイトカイン」が放出された、この培養上清液ですが、具体的にはどのような成分が含有されているのか、有名な成分を一部ご紹介いたします。
ヒト幹細胞培養上清液に含まれる生理活性物質(サイトカイン)の一部
VEGF | 栄養補給を活発にする 毛包周辺の毛細血管の発達を促す |
HGF | 細胞の増殖を促す強力な分裂促進因子 組織修復、血管新生など多彩な働きを持つ |
FGF-1 | 繊維芽細胞の増殖を促進する 肌の成長を促進し、傷の治癒を促進する |
FGF-2 | 血管新生作用により、血流環境を改善する 繊維芽細胞の増殖を促進する |
EGF | 新しい皮膚細胞創生によるシワの改善や予防 肌を滑らかにして若々しくする |
KGF | 線維芽細胞やケラチン産生細胞の増殖を促進 毛周期を成長期へと進める |
IGF-1 | コラーゲンとエラスチンやヒアルロン酸を増やす ケラチノサイトの増殖を促進させ、毛髪を成長させる |
TGF-α | コラーゲンとエラスチンの構造を強化して弾力性を増す 皮膚細胞の成長を促進する |
TGF-β | 細胞の分化、増殖など老化を防ぐ 肌のテクスチャーを改善して若々しい肌を保つ |
PDGF | 毛乳頭細胞の増殖を促進する 毛周辺を成長期に進め、維持する |
これを見ただけでも、多種多様な成分が含まれていることが一目瞭然です。人間の身体を成長・維持させるだけの働きをもつ幹細胞ですから、あらゆる効果が期待できるのです。
ターンオーバーの正常化
皮膚細胞の分化・自己複製の促進によって、肌のターンオーバーが進み、新しい肌に生まれ変わります。肌の一番下の基底層で作られた細胞は1か月程度かけて上の層へと移動していきます。その後、垢になって剥がれ落ち、次の新しい細胞に生まれ変わるのです。
肌の弾力アップ
加齢と共に減少するコラーゲンやエラスチンに働きかけて、若々しい肌へ導きます。肌の土台を支えるコラーゲンやエラスチンの生成が促されると、肌の弾力性がアップして、年齢を感じさせる肌のたるみの改善が期待できます。
美肌効果
紫外線を浴びすぎたり、ターンオーバーのサイクルが乱れるとメラニンが過剰に蓄積されて、シミ・そばかすへ繋がります。培養上清液には、酵素の分泌をコントロールする成分も含まれているため、メラニンの生成を抑制し、シミを予防する美白効果も期待できます。
こうした美容効果以外にも、下記のような毛髪や健康にかかわる効果が期待できます。
毛乳頭細胞の増殖促進 |
毛母細胞の栄養補給 |
傷害部位の治癒促進 疼痛軽減 |
脳梗塞・脊髄損傷 |
疲労回復・生活習慣病予防 |
がん細胞の増殖・転移抑制 |
肝障害・間質性肺炎 |
動脈硬化性病変・EDの改善 |
これほどの効能効果が期待できるのは、成長因子や調節因子など何百種類もの生理活性物質(サイトカイン)などの機能成分を含むヒト幹細胞培養上清液だからこそです。
コメント